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Toggleテクニカルはあくまで「道具」に過ぎない
テクニカル指標は、ローソク足だけではかなり複雑にみえる相場を単純化し、可視化してくれる非常に便利な道具である。
ここで、「道具」といったのは、道具は使いよう、使う側がしっかりしていないと、意味がないと言いたかったからである。
よく、テクニカル指標の見方、シグナルに関して、当たらなかった場合にそのテクニカル指標のせいにして、新たな別のテクニカルを探しに出かけるということ、人が結構いる。確かに、別のテクニカル指標は、新しいものの見方を提供してくれるという点で、それらを導入することは全く意味がないという訳ではない。しかしながら、やはり使い側のビジョンがなければ、結局どのような「道具」を用意しても、期待された効果は得られないし、寧ろ損失拡大の原因になることすらあるだろう。
つまり、使う側(トレーダー)が、それぞれの道具の特性について、しっかりと把握し、どういう場面ではどういう道具をどのように使えば役に立つのか、ということを具体的に理解しておくことが重要なのである。
そもそも、道具のせいにしても、損失は返ってこないし、利益にもつながらない。道具を見切ることも確かに場合によっては必要であるし、新しい道具のほうが自分に合っているかもしれない。だが、いずれにしても、自分自身のスキルアップなしには、どのような道具も無益または逆効果であり、それぞれの道具の効用、自分自身のスタイルとの相性について、考え続けなければならないことは、言うまでもない。
テクニカルを使いこなすには、仮説・モデルが必要
テクニカル指標そのものは、シグナルではない。
また、シグナルと呼ばれるものについても、基本的な考え方を把握しておくことは、ダマシを避け、利益を最大化するためには必要である。
ここで、重要なことは仮説を立て、また値動きについてのモデルを持つことである。
仮説とは、これからの値動きについて、いつ、どのような波を描いて推移するのか、という自分の考えのことである。また、仮説は、単なる願望と区別するために、過去の相場の検証や、ファンダメンタルズなど他の種類の分析も踏まえた、根拠のあるものでなくてはならない(根拠自体は後で誤っていることが分かれば、修正することができる)。
また、モデルというのは、要するに相場にはどのような局面があるのか、というのを単純化して示したものである。例えば、相場には3種類あり、それは上昇トレンド、下降トレンド、レンジ(トレンドなし)というように考える、といったものがそれにあたる。また、トレンド相場には、推進波と修正波がありうる(修正波があったとしても、それはトレンドの終了や逆転ではないと解釈する)と考えるならば、それもやはり値動きのモデルの1つといえる。重要なのは、そのモデル通りに値動きするかどうかを、実際の相場の観察によって反省し、必要に応じて修正していくことである。いうまでもなく、相場はこの世のすべてを反映するものであるため、複雑に考えればきりがない。モデルは、チャートを人間が観察しやすくするための手段・道具であり、やはりその効用をよく理解したうえで、使いこなせるようになることが重要である。
相場参加者の心理の理解
相場参加者について、どのような人々がいて、彼らがどのようなことを考えているのか、ということを想像することもまた重要である。というよりも、テクニカル指標は究極的に言えば、相場参加者の心理を想像するための道具である、といってもよいだろう。
まず、相場参加者で最も多いのは、投機筋である。投機筋といっても、短期の投機筋から、中長期の投機筋まで様々存在している。後述する投資や実需筋と違うのは、投機筋においては、価格差益を追及して取引しているということにある。投機において、利益確定または損切りというのは、買い/売りの反対売買にほかならない。つまり、いったんポジションを持っても、それをどこかで閉じる必要がある、ということである。また、大口の投機筋になればなるほど、ポジションを建て、決済する場合には、相場への影響を考えなくてはならない。つまり、大口投機筋が有利な価格で取引できる条件・環境は、結構決まっているということである。これを発見するための手段が、テクニカル指標といってよい。
また、相場参加者には、自分たち投機筋以外もいるということも理解しておくがある。それは、投資筋(投資家)や実需筋である。彼らと投機筋の本質的な違いは、一度買ったもの(売ったもの)は、反対売買しない(またはそれが遠い将来である)ということである。つまり、投機筋に比べると目立たないものの、相場を一方向に動かすパワーを持っているということである。
以上が、相場参加者の種類に関する大まかな分類である。もちろん、同じ投機筋でも、リスク許容度(リスク感応度)が違ったり、取引する時間帯・時間軸が違ったりするので、細かく分けるならばもっと細かく分けることができる。重要なことは、上記で述べたように相場参加者についても、仮説とモデルを持ち、それを自分のトレードに活用していくということである。